8月初旬 夕方4時―――
道路際の花壇のふちに腰かけ、あと1カ月で完成する現場をみていた。
職人が道路を行きかい「暑いですね」と声をかけてくれる。
突然、若い茶髪のお兄ちゃんがヘルメットをとり私の隣に腰を掛け「疲れたつかれた…」
シャツは汗びっしょりで体にはりつき「ハァーハァー」
たぶん限界なんだろう。
2,3分もしないうちに現場から声がかかる。
「おい、やれよ!みんながやってるんだぞ!」
返事はない。
ヘルメットをかぶりふらつく足取りで現場に戻った。
大丈夫かなと心配になる。
理屈も何もない。ただ必死で体を動かし、何も考えない。1日が終わる。
所詮、20代の若者が50歳のオジサンには体力も根性もまだまだ敵わないんだよ。
そうやって1人前になり、プライドがつくられるんだよ。
「明日、絶対に来いよ」と心の中でつぶやく。
8月17日―――
まだ盆休み中だが、20日にコンクリート打設ということで現場に向かう。
用賀を過ぎたところから突然の雷雨。
現場についたら、みんながカッパを着て鉄筋を組んでいる。
どしゃぶりにカミナリである。
現場所長に「間に合う?」
「大丈夫です。20日コンクリ―トを打ちます。」
“工期、責任感”そんなものではできない。報酬が少なすぎる。
たぶん若い時から培われた“プライド”がそうさせるのだろう。
最近の現場は年寄りが多く、若い職人はほとんどいない。
賃金が低いだけではないと思う。
“達成感”すら味わえない乾いた現場システムになりつつある。
いやだな――。
:tanno: